前項「絵本で論理的思考を育てる方法①」はこちら
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絵の分析技術を学びましょう
では、具体的にどうすれば絵の分析技術を習得できるのでしょうか?
まず、絵の分析においては、基本的に全体像を捉えてから、細部を分析します。
そうすることで、絵の全体像、絵の全体の枠組みを捉えたうえで、全体と細部の関係がよく見えるようになり、絵全体に対する理解が深まります。
目の前にある絵について、ただ闇雲に子供に質問しても、絵の分析は上手くなりません。
細部についても質問ばかりしたり、質問があちこちに飛んでしまうと、子供は絵の全体像を見ることができず、却って混乱して絵を読むことができません。
絵の全体像と細部について
まず、全体像とは次の3つがあげられます。
・テーマ
・設定:場所、季節、天気、時間、時代背景
・人物(動物、物)
それに対し、細部とは例えばこのようなことです。
・人物(動物)は何をしているのか?
・人物(動物)は何を見ているのか?
・人物(動物)は何を考えているのか?
・人物は何歳くらいか?(大人か子供か)
・絵の中には何があるか?
・またそれは、どんな状態か?
・どんな色が使われているか?
・どんな描き方がされているか?
細部についての質問についても、なるべく目立つものから順に質問した方が、子供は絵を捉えやすくなります。
さらに分析を進め、絵を見てすぐわかることではなく、 描かれた人物の心の中の動きを、表情や仕草などから想像させたり、推論させたりすることが重要です。
絵の分析の目的
絵の分析の第一の目的は、対象に対する観察力や洞察力を向上させることと、分析的、論理的、批判的な思考力を子供に習得させることです。
またそれと同時に、討論や議論の場を持つことにも繋がります。
一つの事柄について別の方向から考えさせること、つまり複眼的に考える能力を引き出すための発問が重要です。
具体的な発問例
①テーマ
・これは何の絵なのかな?
・何が描いてあるのかな?
② 設定
・ここはどこかな?
・どうしてそう思うの?
・季節はいつかな?
・どうしてそう思うの?
・もし夏だったら?
・どんなお天気かな?
・どうしてそう思うの?
・もし雨だったらどんな様子?
・時間はいつかな?
・どうしてそう思うの?
③人物(動物・物)
・この絵の家の前には人がいるかな?
・それは大人かな?子供かな?
・どうして子供ってわかるの?
④細部
・子供は何をしているの?
・どうしてそう思うの?
・子供はどこから来たの?
・子供は何を考えているのかな?
・子供はどんな気持ちかな?
・他には誰かいる?
・その人は誰かな?
⑤もう一度大きな情報へ
・この絵は何の絵なのかな?
・何が描かれているのかな?
※今度は前よりも詳しく考えてみましょう
⑥絵から自分へ
・あなたも〜したことある?
・その時どんな気持ちだったかな?
・あなたは冬が好き?
・それはどうしてかな?
・あなたもこんな所に住んでみたいと思う?
発問での注意事項
①決して誘導尋問にならないようにします。子供から答えを無理に引き出すような問いかけをしないことです。
答えの内容にはさほどこだわらず、質問は少なく、子供ができるだけたくさん話ができるようにします。
②なぜを中心に問いかけましょう
絵の分析で大切なのは、子供が自分の考えの根拠を発見し、それを述べることです。
子供が絵を見て自分の考えを口にする時は、必ず何か理由があります。しかし、子供自身はどんな理由があってそう思うのか、よくわかっていないことが多いのです。
何となく感覚的に物を捉えているからです。
こうした状況にある時に、なぜ?と理由を尋ねてあげると、頭の中でぼんやりしていた理由が意識化され、言語で表現できるようになるのです。
子供の理由の種類
3〜4才のうちは、まだ夢の中で生きており、自分の想像に根ざした理由が多いです。
この時期に想像の世界で遊ぶことは重要なことなので、事実と異なっていても子供の発言はそのまま受け入れ、一生懸命耳を傾けてあげましょう。
この時期に大切なことは、たとえ正当な根拠でなくても、自分の考えに理由をつけられる、ということです。
理由をつけられたというだけで、この時期では、論理的に思考しているといえるのです。
5〜6才になり、一般常識や知識を身につけるようになると、絵の見方も変わってきます。
この時期になると、絵を鋭く観察できるだけでなく、観察した事柄を、自分がもっている常識や知識に結びつけて考えられるようになります。
それだけに、この時期にたくさんの絵を分析し、常識や知識と関連づけて論証することの楽しさを、たくさん子供に味わわせてあげることは大切です。
ただ、まだ8才頃までは、夢と現実をいったり来たりしているので、「絵の中で見つけた理由」のなかに「想像してみつけた理由」が混ざっています。
更に年齢が高くなると、絵に描かれた事の前後関係も推論し、理由を見つけられるようになります。
なぜその絵に描かれているような事態になったのか?そしてその後どうなるのか?
絵に描かれた物や人物の表情から、単なる想像だけでなく、根拠に基づいて推理することもできるようになります。
絵から推論して、自由自在に物事が考えられるようになると、絵の分析は子供の思考力を刺激して、さらに想像力豊かに、緻密に、論理的に考える力を子供から引き出してくれるようになります。
まとめ
絵本の読み聞かせが大切なのはよく知られていますが、親が子供へ絵の分析を意識した問いかけを行うことで、論理的思考を子供が身につけることができるとは、驚きですよね。
もっと詳しく学びたい方は、『絵本で育てる情報分析力』三森ゆりか氏著を是非参考にして下さい。